第1章: C++の導入

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C++は、高度なソフトウェア開発やシステムプログラミングに使用される強力なプログラミング言語です。この章では、C++の基本的な特徴、歴史、開発環境のセットアップ、そして最初のC++プログラムを実行する手順について学びます。

目次

1.1 C++の歴史と特徴

C++は、1980年代初頭にBjarne Stroustrupによって開発された言語で、C言語をベースにしています。C++は、オブジェクト指向プログラミング(OOP)の概念を導入し、柔軟で効率的なコードの設計を可能にしました。主に以下のような用途や特徴があります。

  • システムプログラミング: オペレーティングシステムやドライバ、ゲームエンジンなど、ハードウェアに近いレベルで動作するプログラムに使われます。
  • 高いパフォーマンス: C++はコンパイル言語であり、メモリ管理を直接制御できるため、非常に高速な実行速度が求められる場面で使用されます。
  • オブジェクト指向プログラミング: C++は、OOPの特徴(クラス、継承、ポリモーフィズム)を持ち、大規模ソフトウェアの設計や拡張に向いています。

1.2 C++の用途

C++は、さまざまな分野で利用されています。主な用途は次のとおりです。

  • ゲーム開発: 高速な処理とハードウェアへのアクセスが必要なゲームエンジンにC++がよく使われます(例:Unreal Engine)。
  • システムソフトウェア: オペレーティングシステムやネットワークスタックなど、低レベルのシステムプログラムに適しています。
  • アプリケーション開発: デスクトップアプリケーションやクロスプラットフォームアプリケーションもC++で構築されます。

1.3 開発環境のセットアップ

C++プログラムを実行するためには、コンパイラと統合開発環境(IDE)が必要です。最も一般的な選択肢は次のとおりです。

コンパイラの選択

  • GCC(GNU Compiler Collection): オープンソースのC++コンパイラで、LinuxやmacOSに標準で含まれていることが多いです。
  • Microsoft Visual C++: Windows向けの強力なC++コンパイラで、Visual Studioに含まれています。
  • Clang: LLVMプロジェクトの一部で、最新のC++標準に対応しています。

IDEの選択

  • Visual Studio: Microsoft製のIDEで、Windows開発に最適化され、強力なデバッグ機能とコード補完機能が含まれています。
  • CLion: JetBrainsが提供するクロスプラットフォームのIDEで、CMakeを使用したC++プロジェクトに最適です。
  • Code::Blocks: シンプルで軽量なオープンソースのIDEで、マルチプラットフォーム対応。

Visual Studioのセットアップ手順

  1. Visual Studioのダウンロード: Visual Studio公式サイトから最新バージョンをダウンロードします。
  2. C++開発ツールのインストール: インストーラを起動し、**「C++によるデスクトップ開発」**ワークロードを選択してインストールします。
  3. プロジェクトの作成: Visual Studioを起動し、**「新しいプロジェクトの作成」を選択、「空のC++プロジェクト」**を選んでプロジェクトを作成します。

1.4 最初のC++プログラム作成: “Hello, World!”の実行

C++プログラムの最初のステップは、簡単な「Hello, World!」プログラムを実行することです。このプログラムは、C++の基本的な構造を理解するための最初の例としてよく使われます。

コード例: “Hello, World!”

#include <iostream>  // 入出力ストリームを扱うヘッダー

int main() {
    std::cout << "Hello, World!" << std::endl;  // 文字列を出力
    return 0;  // プログラムの終了を示す
}

コードの解説

  • #include <iostream>: 標準ライブラリの入出力ストリームを扱うヘッダーファイルをインクルードします。
  • int main(): C++プログラムのエントリーポイントで、プログラムが最初に実行される関数です。
  • std::cout: 標準出力ストリームを使って、コンソールにテキストを表示します。
  • << "Hello, World!": <<演算子を使ってcoutにデータを渡し、表示します。
  • std::endl: 改行を意味します。
  • return 0: プログラムが正常に終了したことを示します。

プログラムの実行方法

  1. プログラムを作成: 上記のコードをC++ファイル(例:main.cpp)として保存します。
  2. コンパイル: 使用しているIDEで「ビルド」ボタンを押すか、コマンドラインからコンパイルを行います。GCCを使う場合、次のコマンドでコンパイルします。
g++ main.cpp -o hello

3. 実行: コンパイルが成功したら、プログラムを実行します。

./hello  # LinuxまたはmacOS
hello.exe  # Windows

コンソールにHello, World!と表示されれば、プログラムは正常に実行されています。

まとめ

この章では、C++の基本的な特徴、歴史、開発環境のセットアップ、そして最初のC++プログラム「Hello, World!」を作成し、実行するまでのプロセスを学びました。次の章では、C++の基本的な構文やコンセプトについて詳しく学んでいきます。

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